SNS運用代行契約書で定めたい「著作者人格権」とは?投稿の修正・加工・リライトで揉めないためのポイント

SNS運用代行の契約では、「著作権はどちらに帰属するのか」に注目が集まりやすいですが、

実務ではそれと同じくらい重要なのが著作者人格権です。

著作物を作った時点で、著作者には著作権(財産権)だけでなく著作者人格権も発生し、

著作者人格権は譲渡できません。

文化庁も、著作者人格権と著作権は別の権利であり、前者は譲渡不可、

後者は譲渡や許諾が可能だと整理しています。 

そのため、SNS運用代行で「投稿の著作権は発注者に譲渡する」と決めていても、

それだけで発注者が自由に修正・加工・リライトできるとは限りません。

たとえば、投稿文の言い回し変更、画像のトリミング、デザインの差し替え、

クレジット表記の省略といった行為は、契約の書き方によっては後で争いになり得ます。

SNS運用では日常的に発生する作業だからこそ、契約書で先に整理しておくことが大切です。 

目次

著作者人格権とは?

著作者人格権とは、著作者の人格的利益を守るための権利です。

文化庁の資料では、著作者人格権として公表権・氏名表示権・同一性保持権の3つが挙げられています。

著作物を公表するかどうかを決める権利、自分の名前をどう表示するかを決める権利、

そして著作物や題号を意に反して改変されない権利です。 

このうち、SNS運用代行で特に問題になりやすいのが同一性保持権氏名表示権です。

同一性保持権は、著作物や題号を著作者の意に反して勝手に変更・切除などされない権利です。

氏名表示権は、実名にするのか、ペンネームにするのか、無名にするのかを著作者が決められる権利です。 

著作権を譲渡しても、自由に修正できるとは限らない

ここが実務でいちばん誤解されやすいところです。

文化庁は、著作者人格権は譲渡できず、著作権(財産権)は譲渡や利用許諾ができると説明しています。

つまり、契約書に「著作権は発注者に譲渡する」と書いてあっても、

著作者人格権まで一緒に移るわけではありません。 

そのため、発注者側が投稿を自由に手直ししたいのであれば、著作権の帰属だけでなく、

どの範囲の修正・加工を認めるのかまで契約で決めておく必要があります。

文化庁の講習資料でも、人格権不行使特約を置く、改変する場合は事前承諾を必要とする、

または事前に取り決めた範囲で改変を承諾する、といった契約設計の例が示されています。 

さらに、著作権を譲渡する場合には、著作権法27条・28条の権利まで含めるのかにも注意が必要です。

文化庁は、翻訳権・翻案権等(27条)や二次的著作物の利用に関する権利(28条)を譲渡対象に含めたいなら、

契約書に明記する必要があると案内しています。

単に「著作権を譲渡する」とだけ書いて済ませると、二次利用や改変の場面で解釈が割れるおそれがあります。 

SNS運用代行で問題になりやすい場面

SNS運用の現場では、投稿をまったく触らずに使い続けることはむしろ少ないはずです。

たとえば、Instagram用に作った画像を広告用にサイズ変更する、投稿文をキャンペーン向けに書き換える、

リール動画を短く再編集する、バナーから一部の文言を削る、サムネイルにロゴを追加する、

といった修正は日常的に起きます。

こうした行為は、法的には同一性保持権や利用許諾の範囲との関係が問題になりやすいため、

実務上は「よくある作業だから大丈夫」と考えず、先にルール化しておくのが安全です。 

また、クレジット表記の扱いも見落としやすいポイントです。

デザイナー名や制作者名を毎回表示するのか、表示しないのか、

表示する場合の方法をどうするのかは、氏名表示権に関わります。

文化庁も、著作者名の表示の仕方は著作者人格権の問題であり、契約で必要に応じて整理すべきだとしています。 

契約書で決めておきたいポイント

SNS運用代行契約書では、少なくとも次の点は明確にしておきたいところです。

文化庁の資料でも、利用方法や条件、対象、期間、地域などを

明確に列挙する形が認識共有に役立つとされています。 

まず、どの制作物が契約の対象なのかをはっきりさせます。

投稿文、画像、動画、サムネイル、リール、ハッシュタグ案、台本、

元データまで含むのかを曖昧にしないことが大切です。 

次に、著作権の帰属を定めます。発注者へ譲渡するのか、受注者に残したまま利用許諾にするのか、

27条・28条の権利まで含めるのかを整理します。 

そのうえで、修正・加工・リライトの範囲を定めます。

たとえば、「誤字脱字の修正」「媒体ごとのサイズ変更」「トリミング」

「文言の軽微な調整」「広告転用のための再編集」など、

想定される改変を具体的に書いておくと後で揉めにくくなります。

文化庁も、事前に取り決めた範囲で改変を承諾するという整理を例示しています。 

さらに、著作者人格権の扱いも欠かせません。

実務では、発注者側が円滑に運用できるように、

一定の範囲で著作者人格権を行使しない旨を定めることがあります。

ただし、これは受注者にとって不利益になり得るため、何について、

どこまで不行使とするのかを丁寧に書くことが重要です。 

加えて、クレジット表記実績掲載も決めておくと安心です。

氏名を表示するかしないか、制作実績としてポートフォリオ掲載してよいか、

社名やアカウント名まで出してよいかは、後から揉めやすい論点です。 

発注者側の注意点

発注者側としては、「お金を払ったから自由に使えるはず」と思い込まないことが大切です。

文化庁が示すとおり、著作権と著作者人格権は別物であり、利用方法や条件は契約で設計する必要があります。

特に、SNS運用では後から投稿を広告へ転用したり、別媒体に流用したり、

デザインを差し替えたりすることが多いため、将来やりそうな使い方を最初から想定しておく方が安全です。 

受注者側の注意点

受注者側としては、「著作者人格権があるから何でも拒否できる」と考えるよりも、

どこまで相手に使わせるつもりなのかを契約書で整理しておく方が実務的です。

文化庁も、権利の取扱いは著作物の利用予定や相手の意向に応じて当事者が決めるべきだとしており、

利用方法や条件を明確にすることを勧めています。

後で関係が悪くならないようにするためにも、

改変の範囲やクレジットの扱いを口頭ではなく書面で残すのが大切です。 

まとめ

SNS運用代行契約では、著作権の帰属だけ決めれば十分、とは言えません。

著作者人格権は譲渡できず、特に同一性保持権や氏名表示権は、

投稿の修正・加工・リライト・再編集・クレジット表記の場面で問題になりやすい権利です。

だからこそ、契約書では「誰が権利を持つか」だけでなく、「どこまで修正できるか」

「人格権をどう扱うか」まで具体的に決めておくことが、実務ではかなり重要です。 

SNS運用代行契約書の作成や見直しでは、著作権譲渡条項だけでなく、著作者人格権不行使特約、改変の許容範囲、

クレジット表記、実績掲載、元データの引渡しまで含めて整理しておくと、トラブル予防につながります。

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