SNS運用代行契約書で定めたい「著作権譲渡」と「利用許諾」の違いとは?

SNS運用代行契約書を作るときに、特に重要なのが

「著作権を譲渡するのか」「利用許諾にするのか」

をはっきり決めておくことです。

この点があいまいなままだと、

契約終了後の投稿の使い方や、

広告・ホームページへの転用、

加工の可否などでトラブルになりやすくなります。

文化庁も、著作権契約では利用範囲や条件を明確に

定めることが重要だと案内しています。  

この記事では、SNS運用代行契約でよく問題になる

「著作権譲渡」と「利用許諾」の違いを、

初めての方にもわかりやすく解説します。

目次

著作権譲渡とは?

著作権譲渡とは、著作権者が持っている

著作権(財産権)そのものを相手に移すことです。

文化庁は、著作権(財産権)は譲渡でき、

譲り受けた側が著作権者になると説明しています。

一方で、著作者人格権は譲渡できません。  

SNS運用代行でいえば、運用会社やクリエイターが

作成した投稿文、画像、バナー、動画などについて、

契約に基づいて発注者側へ著作権を移すのが著作権譲渡です。

たとえば著作権譲渡にしておくと、発注者側はその投稿を

  • 自社サイトに転載する
  • 広告に流用する
  • 一部を修正して再利用する
  • 契約終了後も継続して使う

といった運用をしやすくなります。もっとも、

実際にどこまで自由に使えるかは契約書の書き方次第です。  

利用許諾とは?

利用許諾とは、著作権を相手に渡すのではなく、

一定の範囲で使うことだけを認める契約です。

文化庁の著作権契約マニュアルでも、利用許諾契約は、

著作権を譲渡するのではなく、利用方法を定め、

その方法に限定して利用を認める契約と説明されています。  

つまり、権利自体は運用代行会社や

クリエイターに残したまま、発注者に対して

「Instagram投稿として使ってよい」

「自社サイトでも使ってよい」など、

決めた範囲で利用を認める形です。

利用許諾には、文化庁のマニュアル上、

独占的な利用許諾非独占的な利用許諾があります。

独占的であれば、一定範囲ではその相手だけが

使える形になり、非独占的であれば、

権利者が他者にも許諾できる余地があります。  

著作権譲渡と利用許諾の違い

両者のいちばん大きな違いは、

権利そのものが移るかどうかです。

著作権譲渡は、著作権そのものを相手に移す考え方です。

これに対して利用許諾は、権利は元の著作権者に

残したまま、相手に使わせるだけです。  

実務上は、次のように考えるとわかりやすいです。

著作権譲渡が向いているケース

発注者側が投稿や画像を今後も幅広く使いたい場合です。
たとえば、SNSだけでなくホームページ、広告、

チラシ、LP、動画素材などへ横展開する予定があるなら、

譲渡の方が管理しやすいことがあります。  

利用許諾が向いているケース

受注者側が制作物の権利を残したい場合や、

利用範囲を限定したい場合です。

たとえば「この画像はInstagram投稿にだけ使える」

「契約期間中のみ利用可」「広告転用は別料金」

といった設計にしやすいのが利用許諾です。  

SNS運用代行契約で多いトラブル

SNS運用代行では、譲渡か利用許諾かを

明確にしていないために、後から揉めることが少なくありません。

よくあるのは、発注者が

「お金を払ったのだから自由に使えるはず」

と思っているケースです。

しかし、文化庁の資料でも、

制作依頼と著作権の帰属は別問題として

整理されており、単に報酬を払っただけで

当然に著作権が移るわけではありません。  

実際には、次のようなトラブルが起こりやすいです。

契約終了後に投稿を使い続けてよいか分からない

過去の投稿を再投稿したり、

別媒体に転用したりしたいのに、

契約書に何も書いていないため、

使ってよいのか不明になるケースです。

利用許諾であれば、期間や媒体を

明記しておかないと後で争いになりやすくなります。  

広告やホームページへの転用で揉める

SNS投稿用に作った画像や文章を、

発注者が広告や自社サイトにも使いたいと思っても、

利用許諾の範囲がSNS投稿だけなら

別途合意が必要になることがあります。

文化庁も、利用許諾では想定する利用方法を

具体的に定めることが重要だとしています。  

加工や修正で揉める

SNSでは、文言修正、トリミング、サイズ変更、

デザイン修正などが日常的に発生します。

ところが、著作者人格権は譲渡できないため、

改変との関係も含めて丁寧に設計しないと、

「勝手に変えられた」と問題になることがあります。  

著作権譲渡にするときの注意点

著作権譲渡と書くなら、単に「著作権を譲渡する」

とだけ書いて終わりにしない方が安全です。

文化庁は、著作権法27条の翻訳権・翻案権等と、

28条の二次的著作物の利用に関する権利について、

契約で明記しないと譲渡の対象から

外れると説明しています。  

そのため、実務では

「著作権法27条及び28条の権利を含む」

という文言を入れるかどうかが非常に重要です。

ここが抜けていると、改変や二次利用の場面で

思ったほど広く使えない可能性があります。  

また、著作者人格権は譲渡できないため、

必要に応じて人格権を行使しない旨

どう書くかも検討ポイントになります。

ただし、これは受注者側に不利になりやすい

条項でもあるので、広く入れればよい

というものではありません。  

利用許諾にするときの注意点

利用許諾を選ぶ場合は、

どこまで使えるのかを具体的に書くこと

がとても重要です。

文化庁のマニュアルでも、利用対象著作物の特定、

利用方法、利用条件などを明確にする考え方が

示されています。  

SNS運用代行契約では、

少なくとも次の点は決めておきたいところです。

  • どの投稿・画像・動画が対象か
  • どの媒体で使えるか
  • 広告転用はできるか
  • ホームページやLPに掲載できるか
  • 契約終了後も使えるか
  • 加工や編集をしてよいか
  • 独占か非独占か

こうした点が曖昧だと、

「SNS投稿だけだと思っていた」

「広告利用は別料金のつもりだった」など、

後から認識違いが表面化しやすくなります。  

契約書ではどちらを選ぶべき?

どちらが正解というより、

誰の立場で、どのように使いたいのかで決まります。

発注者側としては、契約終了後も自由に使いたい、

媒体をまたいで横展開したい、

将来の広告運用にも使いたいという事情があるなら、

著作権譲渡を検討しやすいです。  

一方で、受注者側としては、

制作物の権利を残しつつ利用範囲だけ認めたい、

二次利用は別料金にしたい、他案件への応用可能性を

残したいという事情があるため、

利用許諾の方が実務に合うこともあります。  

SNS運用代行では、投稿ごとに完全譲渡まで

求めるケースばかりではありません。

そのため、実務では

  • 通常投稿は利用許諾
  • ロゴ、キービジュアル、広告用クリエイティブなどは譲渡

のように分けて設計する考え方も十分あり得ます。

これは法令そのものに明記された運用ではなく、

上記の契約原則からの実務上の整理です。

まとめ

SNS運用代行契約書では、著作権譲渡

利用許諾の違いを理解したうえで、

どちらにするのかをはっきり決めることが重要です。

著作権譲渡は、権利そのものを相手に移す契約です。

利用許諾は、権利を残したまま

一定範囲で使わせる契約です。  

そして実務では、単に「譲渡」「許諾」

と書くだけでは足りません。

特に、

  • 27条・28条を含めるか
  • 著作者人格権をどう扱うか
  • どの媒体で使えるか
  • 契約終了後も使えるか
  • 広告転用や加工はできるか

まで整理しておくことが、トラブル防止には欠かせません。  

SNS運用代行契約書を見直すときは、

報酬や業務範囲だけでなく、

著作権の帰属と利用範囲までセットで

確認するのがおすすめです。  

著作権・契約書のご相談は行政書士中村拓哉事務所へ

著作権、契約書、業務委託契約、SNS運用に関するご相談を承っております。

  • 外注した制作物の著作権は誰のものか確認したい
  • 契約書に入れるべき条項が分からない
  • 商用利用や画像利用の範囲で不安がある
  • トラブルになる前に内容を整理しておきたい

このようなお悩みがある方は、お気軽にお問い合わせください。
事業者の方、クリエイターの方からのご相談に対応しております。

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