2026年4月、X上で「歌ってみた」「弾いてみた」動画の投稿と著作権の関係が話題になりました。
きっかけは、JASRACが公式Xで、Xは現時点でJASRACとの契約が締結されていないため、
JASRAC管理楽曲をXに投稿する際は、投稿者による個別申請が必要と案内したことです。
JASRACと契約しているYouTube、Instagram、TikTokなどとは扱いが異なるため、
混乱した方も多いのではないでしょうか。
この記事では、
- なぜXだけ扱いが違うのか
- JASRACに申請すればそれで足りるのか
- 歌ってみた動画で注意したいポイントは何か
を、できるだけわかりやすく整理します。
なぜ今、Xの歌ってみた動画が話題になっているのか
今回の話題の中心は、「SNSならどこでも同じように音楽を使えるわけではない」という点です。
JASRACは2026年4月14日、公式Xで、YouTube、Instagram、TikTokなど
JASRACと契約しているUGCサービスやSNSであれば、投稿者が個別に許諾を得る必要はない一方、
Xについては現時点でJASRACとの契約が締結されておらず、投稿者による個別申請が必要だと案内しました。
報道各社もこの内容を取り上げ、X上で一気に話題が広がりました。
JASRACが公表している「利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧」は
2026年4月8日最終更新となっており、
Instagram、Threads、TikTok、Twitch、YouTubeなどは掲載されていますが、Xは一覧に見当たりません。
つまり、プラットフォーム側の包括契約があるかどうかが、手続の要否を分けていることになります。
XとYouTube・Instagram・TikTokは何が違うのか
JASRACは、契約を締結している動画投稿サービスについては、
一定の範囲内であれば投稿者が個別手続をしなくても
JASRAC管理楽曲を含む動画をアップロードできると案内しています。
YouTubeなどについては、投稿者は原則として手続不要ですが、
利用方法によっては個別手続が必要になる場合もあります。
一方で、JASRACは契約していない動画投稿サービスについては、
契約状況を一覧で確認するよう案内しており、Xはその一覧に掲載されていません。
さらに、JASRACのFAQでは、Xでの楽曲利用はアカウント単位で許諾を取得する前提で案内されています。
つまり、Xでは「サービス全体の契約に乗る」のではなく、投稿者自身が申請する前提で考える必要があります。
「Xに歌ってみたを投稿すると全部違法」なのか
ここは言い方に注意が必要です。
今回のポイントは、Xなら一律に絶対ダメというより、
JASRAC管理楽曲を利用するなら、Xでは個別申請が必要ということです。
JASRACは、非商用配信向けの手続ページで、個人や非営利団体向けにJ-TAKTからの申込み、
申込書の郵送、許諾番号の表示、使用料の支払い、利用曲目の報告という流れを案内しています。
通常、許諾番号等はおおむね2週間ほどで送付されるとされています。
また、JASRACのFAQでは、Xの非商用利用について同時送信可能化曲数を基準に使用料が決まり、
個人の場合は1曲で年額1,200円、9曲以上では年額1万円になる旨が案内されています。
したがって、少なくともJASRAC管理楽曲については、
無申請のまま「普通にSNSだから大丈夫」と考えるのは危ないといえます。
ただし、JASRACに申請すればそれで全部終わりではありません
ここは特に誤解が多い部分です。
JASRACが管理しているのは、主に作詞・作曲などの著作権に関する部分です。
しかし、歌ってみた動画では、JASRACへの申請だけでは足りない場合があります。
市販のCDやダウンロード音源を使う場合
JASRACは、市販CDやダウンロードした音源を利用する場合、
著作権とは別に著作隣接権の許諾が必要と明記しています。
これは、レコード会社や実演家の権利が別にあるためです。
つまり、カラオケ音源や市販音源をそのまま使う場合、JASRACだけ見ていても不十分なことがあります。
編曲、替え歌、訳詞をする場合
JASRACは、編曲・替え歌・訳詞に関する権利は管理していないと案内しています。
非商用配信の手続ページでも、これらを行う場合は、
権利者である作詞者・作曲者・音楽出版社等に連絡するよう案内されています。
したがって、キー変更や簡単なアレンジ程度でも内容によっては別論点になり得るため、
「JASRACに出せば安心」とは言い切れません。
動画と音楽を組み合わせる場合
JASRACの動画配信案内では、動画配信でJASRAC管理楽曲を利用する場合、
ビデオグラム録音の手続きとインタラクティブ配信の手続きが必要となると案内されています。
また、非商用配信の案内でも、映像とともに音楽を利用する場合は、
事前にビデオグラム録音の手続きが必要な場合があるとされています。
動画投稿は「音だけ」ではなく「映像と組み合わせた利用」になるため、この点も見落としやすいポイントです。
過去にXへ投稿した歌ってみた動画はどう考えるべきか
「では、昔投稿した動画は全部すぐ削除しなければいけないのか」と不安になる方もいると思います。
この点は、投稿内容、使っている楽曲、音源の種類、編曲の有無、収益化の有無などで事情が変わるため、
一律に断定するのは危険です。
もっとも、JASRACが現時点でXでは個別申請が必要と案内している以上、
少なくとも“Xは他のSNSと同じ感覚で大丈夫”とは考えない方が安全です。
既存投稿がある場合は、まずJASRAC管理楽曲かどうかを確認し、
使用音源や動画内容も含めて整理したうえで、必要に応じて削除・差し替え・申請の検討をするのが現実的です。
これはJASRACの手続案内とFAQから導ける実務上の整理です。
これからXに歌ってみた動画を投稿したい人が確認したいポイント
投稿前に最低限確認したいのは、次の5点です。
その曲はJASRAC管理楽曲か
JASRACは、管理楽曲かどうかを作品データベース「J-WID」で確認するよう案内しています。
まずここを確認しないと、手続の入口が判断できません。
投稿先のサービスはJASRACとの契約があるか
UGCサービス一覧に掲載されているサービスなら、一定範囲では投稿者の個別手続が不要です。
Xは現時点で一覧にありません。
使うのは自作演奏か、市販音源か
市販音源なら、著作隣接権の確認も必要です。JASRACだけでは完結しません。
編曲や替え歌をしていないか
編曲・替え歌・訳詞は、JASRACが管理していない権利が関わるため、別途確認が必要です。
5収益化や広告目的の利用ではないか
JASRACの非商用配信ページでは、情報料や広告料等収入がない、
営利を目的としない配信を前提に案内しており、
広告料等収入がある場合や営利法人等は商用配信の確認を求めています。
趣味の投稿のつもりでも、収益化の有無で扱いが変わる可能性があります。
まとめ
今回話題になったのは、XではJASRAC管理楽曲の歌ってみた・弾いてみた動画について、
投稿者による個別申請が必要という点です。YouTube、Instagram、TikTokなど、
JASRACと契約しているサービスと同じ感覚で考えてしまうと、思わぬ見落としにつながります。
また、実際には
- JASRAC管理楽曲かどうか
- 市販音源かどうか
- 編曲や替え歌があるか
- 非商用か商用か
- 映像と音楽をどう組み合わせているか
によって、必要な確認事項は変わります。
単に「JASRACに出せば終わり」とは限らず、著作隣接権や編曲に関する権利まで見る必要がある点が重要です。
XやSNSへの投稿前に、
「この使い方で本当に大丈夫なのか不安」「JASRAC以外の確認も必要か知りたい」
という場合は、投稿前に整理しておくとトラブル予防につながります。


コメント