著作権者不明の画像・写真は勝手に使っていい?未管理著作物裁定制度が使える場合・使えない場合を解説

目次

「誰のものか分からない画像」は使っていいのか

ホームページやパンフレット、SNS投稿、資料作成などで、

「この画像、誰が撮ったのか分からない」「古い写真で著作権者が見当たらない」

という場面は少なくありません。

ですが、著作権者が分からないからといって、自由に使ってよいわけではありません。

文化庁も、権利者不明や意思不明の著作物については、通常の許諾が取れない場合に備えて、

裁定制度という例外的な仕組みを用意しています。

逆にいえば、そうした制度が必要になるほど、原則は「勝手に使えない」ということです。 

まず知っておきたい2つの裁定制度

著作権者が不明な画像や写真の利用を考えるとき、関係してくる制度は大きく2つあります。

1つは、著作権者不明等の場合の裁定制度です。

これは、権利者が誰か分からない、所在が分からない、亡くなった権利者の相続人が分からない、

といった場合に使う制度です。

もう1つが、未管理著作物裁定制度です。

こちらは令和5年の著作権法改正で創設され、令和8年4月から運用開始の制度で、

著作物の利用可否に関する権利者の意思が確認できない場合に、

文化庁長官の裁定と補償金の支払いによって適法利用を可能にする仕組みです。 

「著作権者不明」と「意思不明」は違う

ここは非常に大事です。

著作権者不明とは、そもそも誰に許可を求めればよいのか分からない状態です。

たとえば、古い写真で撮影者名がなく、掲載元もなく、調べても誰が権利者か分からない場合です。

こうしたケースでは、まず「著作権者不明等の場合の裁定制度」が問題になります。 

一方で、意思不明とは、権利者らしき人や連絡先は見つかるが、

利用してよいかどうかの意思が確認できない状態です。

たとえば、個人サイトやSNSに画像が掲載されているものの、利用条件の記載がなく、

返答も得られないような場合です。

このときに検討対象になるのが未管理著作物裁定制度です。 

つまり、
「誰に聞けばいいか分からない」のか、
「聞く相手は見えるが返事が取れない」のか

で、制度の考え方が変わります。 

未管理著作物裁定制度が使えるのはどんな場合か

未管理著作物裁定制度が使えるのは、ざっくりいうと、公表されていて、

著作権等管理事業者に管理されておらず、利用可否について権利者の意思表示が確認できない著作物等です。 

画像や写真でいうと、次のような場面が典型です。

  • ネット上で公開されているが、利用ルールの記載がない
  • 著作権管理団体による管理も見当たらない
  • 権利者らしき人は特定できても、利用条件の表示がなく、返答も得られない

ただし、ここで重要なのは、「見つからない気がする」では足りないという点です。

文化庁は、未管理著作物裁定を申請する前に、作品の周辺表示、

権利者のものと想定されるウェブサイトやSNS、関係団体サイト、

さらに分野横断権利情報検索システムなどを確認し、合理的な範囲で探索する必要があるとしています。 

未管理著作物裁定制度が使えないケース

ここは実務上とても大切です。

未管理著作物裁定制度は便利に見えますが、使えないケースもはっきりあります。

文化庁のQ&Aでは、たとえば権利者のウェブサイトに「利用に関する問い合わせはこのメールアドレスへ」

と書かれており、その連絡先にメールを送ったが返信がない、というケースについて、

未管理著作物裁定制度も、著作権者不明等の場合の裁定制度も利用できないと明示しています。

未管理著作物裁定制度は、利用申込を受け付けるための連絡先が表示されている場合には使えないからです。 

つまり、返事が来ないからすぐ裁定制度へ、という流れにはならないということです。 

また、著作権等管理事業者によって管理されている作品も対象外です。

管理されているなら、通常の許諾ルートで進めるべきだからです。 

「14日間返信がなければ使える」は誤解

未管理著作物裁定制度について、「権利者に連絡して14日間返事がなければ使える」

と理解してしまう人がいますが、これは正確ではありません。

文化庁のFAQでも、14日間応答がなければ自動的に利用できるわけではないと明確に否定されています。

裁定制度で利用するには、あくまで申請、要件確認、文化庁長官の裁定、補償金の支払いという流れが必要です。 

つまり、連絡 → 返事なし → 自由に使えるではなく、

連絡や探索を行う → 制度要件を満たすか確認する → 申請して裁定を受けるという流れです。 

費用はどれくらいかかるのか

未管理著作物裁定制度では、費用もかかります。

文化庁のFAQによると、裁定を受けて利用するためには、

登録確認機関への手数料が申請1件あたり13,800円(税抜)かかり、

これに加えて、著作物や利用方法に応じた補償金が必要です。

補償金額はケースごとに異なりますが、文化庁は補償金額シミュレーションシステムも案内しています。 

したがって、「とりあえず制度を使えば安く済む」とは限りません。

実際には、探索の手間、申請書類の準備、手数料、補償金まで含めて考える必要があります。 

どこまで探せばよいのか

ここも悩みやすいところです。

文化庁は、未管理著作物裁定を申請する際、

  • 当該著作物等の周辺表示
  • 権利者のものと想定されるウェブサイトやSNS、ブログ
  • 権利者団体や出版者等の関連サイト
  • 分野横断権利情報検索システムで表示された関連サイト

などを確認する必要があると示しています。 

ただし、著作物の種類や公表のされ方によって確認すべき範囲は異なります。

文化庁も、合理的な範囲での探索として、その著作物について通常確認できる範囲において、

利用ルールや連絡先の有無を確認する必要があるとしています。 

つまり、写真1枚でも、

  • どこに掲載されていたか
  • キャプションがあるか
  • 奥付やクレジットがあるか
  • 関連団体のサイトに情報があるか

などを丁寧に見ていく必要があります。

勝手に使う前に考えたいこと

画像や写真は、ネット上で簡単に見つかるぶん、

「誰のものか分からないし、たぶん大丈夫だろう」と考えてしまいがちです。

しかし、文化庁が裁定制度を整備していること自体、

権利者不明・意思不明の著作物を使うには、本来それだけ慎重な手続が必要ということを示しています。 

特に、企業のホームページ、広告、商品販売、パンフレット、自治体資料など、

公開性や営利性がある利用では、後から問題化したときの影響も大きくなります。

制度が使えるかどうか以前に、そもそも利用自体を見直すべき場面もあります。

まとめ

著作権者不明の画像や写真は、「分からないから自由に使える」わけではありません。

権利者そのものが分からない場合には、著作権者不明等の場合の裁定制度が問題になり、

権利者の意思が確認できない場合には、未管理著作物裁定制度が問題になります。

ただし、未管理著作物裁定制度は、連絡先や利用申込窓口が表示されている場合には使えず、

14日返信がないだけで利用できる制度でもありません。 

画像や写真の利用では、

誰が権利者か利用ルールや連絡先があるか、管理事業者に委ねられていないか

を丁寧に確認することが第一歩です。

そのうえで制度利用の可能性を検討する、という順番が大切です。

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