ロゴ、バナー、チラシ、パンフレット、SNS画像、ホームページ用画像など、
事業を行っているとデザイン制作を外注する場面は多くあります。
しかし、デザイン制作を外注したときに意外とトラブルになりやすいのが、
「完成したデザインの著作権は誰のものになるのか」という点です。
発注者側は、「お金を払って作ってもらったのだから、当然こちらが自由に使えるはず」と考えることがあります。
一方で、デザイナーや制作会社側は、「制作したのはこちらなので、著作権まで当然に渡したわけではない」
と考えていることもあります。
この認識のズレを放置したまま進めてしまうと、後から、
- ロゴを別の商品にも使ってよいのか
- バナーを広告以外にも使えるのか
- チラシデザインをホームページに掲載してよいのか
- デザインを一部修正して使ってよいのか
- 制作会社が実績として掲載してよいのか
- AIデータやPSDデータなどの元データをもらえるのか
といった点でトラブルになる可能性があります。
この記事では、デザイン制作を外注するときに確認しておきたい著作権と契約書のポイントについて、
発注者・制作者の双方の視点からわかりやすく解説します。
デザイン制作を外注したら著作権は発注者に移る?
まず押さえておきたいのは、デザイン制作を外注して報酬を支払ったからといって、
著作権が当然に発注者へ移るわけではないという点です。
たとえば、ロゴやバナー、チラシのデザインを外注した場合でも、
契約書で著作権の譲渡について明確に定めていなければ、著作権が制作者側に残る可能性があります。
もちろん、発注者がまったく使えないという意味ではありません。
通常は、依頼した目的の範囲で利用することが想定されます。
ただし、どこまで自由に使えるのかは、契約内容によって変わります。
たとえば、
- 名刺に使うために依頼したロゴを看板にも使えるのか
- Instagram広告用に作ったバナーをホームページにも掲載できるのか
- チラシ用に作ったデザインをパンフレットやLPに転用できるのか
- 納品後に自社で色や文字を変更してよいのか
といった点は、契約書で明確にしておくことが大切です。
SNS運用代行で作った投稿の著作権については、こちらの記事でも解説しています。
SNS運用代行で作った投稿の著作権は誰のもの?実務でよくあるトラブルを解説
ロゴ・バナー・チラシでは注意点が少し違う
一口にデザイン制作といっても、ロゴ、バナー、チラシでは利用場面が異なります。
そのため、契約書で確認すべきポイントも少し変わってきます。
ロゴ制作で注意したいポイント
ロゴは、会社名、屋号、サービス名、商品名などを象徴する大切なデザインです。
一度作ると、長期間にわたってさまざまな場面で使うことが多いです。
たとえば、
- ホームページ
- 名刺
- 看板
- チラシ
- パンフレット
- SNSアイコン
- 商品パッケージ
- ユニフォーム
- 営業資料
- 広告
などに使用することがあります。
そのため、ロゴ制作を外注する場合は、発注者側としては、
できる限り広い範囲で使えるように契約書を整えておくことが重要です。
特に確認したいのは、次の点です。
- ロゴの著作権は発注者に譲渡されるのか
- 商用利用できるのか
- 複数の媒体で使えるのか
- 色やサイズを変更してよいのか
- 別の商品・サービスにも使えるのか
- 元データを受け取れるのか
- 制作者が実績として掲載できるのか
ロゴは事業の顔になるものです。
後から
「この用途では使えません」
「改変はできません」
「元データは別料金です」
となると困るケースがあります。
そのため、ロゴ制作では、特に著作権の帰属と利用範囲を明確にしておくことをおすすめします。
バナー制作で注意したいポイント
バナーは、SNS広告、Web広告、キャンペーン告知、
ホームページ内の導線などで使われることが多い制作物です。
バナー制作で注意したいのは、どの媒体で、どの期間、どの範囲まで使えるのかという点です。
たとえば、Instagram広告用に作ったバナーを、後から次のように使いたくなることがあります。
- ホームページに掲載する
- XやInstagramの投稿画像として使う
- LINE公式アカウントのリッチメニューに使う
- YouTubeのサムネイル風に加工する
- チラシに転用する
- 別キャンペーンで使い回す
このような利用ができるかどうかは、契約書で確認しておく必要があります。
特に、バナーに写真素材、イラスト、フォント、テンプレートなどが使われている場合は注意が必要です。
素材サイトの利用規約によっては、使用できる媒体や用途に制限がある場合もあります。
チラシ制作で注意したいポイント
チラシ制作では、印刷して配布することを前提にデザインを依頼するケースが多いです。
しかし、実際には完成したチラシデザインを、
- ホームページに掲載する
- SNSに投稿する
- PDFで配布する
- 一部を切り取ってバナーに使う
- 内容を修正して再配布する
- 別の地域・別のサービスのチラシに流用する
といった使い方をしたくなることがあります。
この場合も、契約書で利用範囲を明確にしていないと、後からトラブルになる可能性があります。
また、チラシには写真、イラスト、地図、文章、キャッチコピーなど、複数の要素が含まれることがあります。
そのため、チラシ全体のデザインだけでなく、使用されている素材の権利関係も確認しておくことが大切です。
著作権譲渡にするか、利用許諾にするか
デザイン制作の契約書では、著作権の扱いとして、主に次の2つの考え方があります。
- 著作権譲渡
- 利用許諾
著作権譲渡とは
著作権譲渡とは、制作物の著作権を制作者から発注者へ移すことです。
発注者側としては、制作物を自由に使いやすくなるというメリットがあります。
特に、ロゴのように長期的・継続的に使うものについては、著作権譲渡を検討することがあります。
ただし、著作権譲渡にする場合でも、契約書ではどの権利を譲渡するのかを明確にする必要があります。
また、制作者側としては、すべての著作権を譲渡することで、今後の利用が制限される可能性があります。
そのため、譲渡の範囲や対価について慎重に確認することが大切です。
利用許諾とは
利用許諾とは、著作権は制作者側に残したまま、発注者に一定の範囲で利用を認める形です。
たとえば、
- 発注者の事業に関する広告・販促目的で利用できる
- 指定されたSNSやホームページで利用できる
- 契約期間中のみ利用できる
- 印刷物として何部まで利用できる
- 改変は事前承諾が必要
といった形で定めることがあります。
利用許諾の場合は、
どこまで利用できるのか
を具体的に書くことが重要です。
著作権譲渡と利用許諾の違いについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
SNS運用代行契約書で定めたい「著作権譲渡」と「利用許諾」の違いとは?
元データの引き渡しも契約書で確認する
デザイン制作でよく問題になるのが、元データをもらえるかどうかという点です。
たとえば、
- Illustratorデータ
- Photoshopデータ
- Canvaデータ
- Figmaデータ
- InDesignデータ
- 動画編集データ
- 高解像度の画像データ
などです。
発注者側は、「納品されたのだから元データも当然もらえる」と思っていることがあります。
しかし、実務上は、完成データと元データは別扱いになっていることもあります。
たとえば、納品物はJPEG、PNG、PDFのみで、AIデータやPSDデータは別料金というケースもあります。
そのため、発注者側で今後修正したい、印刷会社に渡したい、別のデザイナーに引き継ぎたいという場合には、
契約前に元データの扱いを確認しておくことが大切です。
契約書では、次のような点を決めておくと安心です。
- どの形式のデータを納品するのか
- 元データを納品物に含めるのか
- 元データの引き渡しに追加料金が必要か
- 発注者が元データを編集してよいのか
- 第三者に元データを渡してよいのか
- 契約終了後も元データを使えるのか
元データの扱いは、著作権そのものとは別に問題になることがあります。
そのため、著作権条項だけでなく、納品物の範囲としても明確にしておくことが重要です。
フリー素材・有料素材・フォントの利用条件に注意
デザイン制作では、制作者がすべてを一から作るとは限りません。
実際には、次のような素材が使われることがあります。
- フリー素材サイトの写真
- 有料素材サイトのイラスト
- Canvaなどのテンプレート
- フォント
- アイコン素材
- 背景画像
- AI生成画像
- 発注者から提供された写真
ここで注意したいのは、素材ごとに利用条件が異なるという点です。
たとえば、商用利用は可能でも、ロゴへの使用は禁止されている素材があるかもしれません。
また、SNS投稿には使えても、広告や商品パッケージには使えない場合もあります。
さらに、フォントについても、印刷物、Web、ロゴ、動画など、
利用場面によってライセンスの確認が必要になることがあります。
契約書では、次のような点を確認しておくと安心です。
- 外部素材を使用する場合のルール
- 素材の利用規約を誰が確認するのか
- 有料素材の費用を誰が負担するのか
- 商用利用や広告利用が可能か
- 発注者が提供した素材の権利確認
- 素材に権利上の問題があった場合の責任分担
特に、発注者が写真やロゴ、文章を制作者に提供する場合は、
発注者側でも権利関係を確認しておく必要があります。
実績掲載・ポートフォリオ利用を認めるか
デザイン制作では、制作者側が完成物を実績として掲載したいと考えることがあります。
たとえば、
- 制作者のホームページに掲載する
- SNSで制作実績として紹介する
- ポートフォリオに掲載する
- 営業資料に掲載する
- 制作事例としてクライアント名を出す
といったケースです。
制作者側にとって、実績掲載は営業活動のために重要です。
一方で、発注者側としては、
- 公開前のデザインを出してほしくない
- 会社名を出してほしくない
- ロゴを勝手に掲載してほしくない
- キャンペーン内容を外部に出してほしくない
- 数値や成果を掲載してほしくない
と考えることもあります。
この点を契約書で決めていないと、
「実績として載せてよいと思っていた」
「勝手に掲載されるとは思っていなかった」
というトラブルになりかねません。
そのため、契約書では、
- 実績掲載を認めるか
- 事前承諾が必要か
- 匿名であれば掲載できるか
- ロゴや会社名を掲載できるか
- 制作物の画像を掲載できるか
- 掲載できる媒体
- 削除依頼があった場合の対応
などを明確にしておくことが大切です。
実績掲載については、SNS運用代行の場面でも問題になりやすいポイントです。
SNS運用代行の実績掲載はどこまでOK?ポートフォリオ利用・事例紹介で揉めないためのポイント
著作者人格権の不行使条項も確認する
デザイン制作の契約書では、著作権だけでなく、著作者人格権についても確認しておきたいところです。
著作者人格権とは、著作者の人格的な利益を守るための権利です。
デザイン制作では、納品後に発注者が、
- 色を変更する
- 文字を差し替える
- サイズを変える
- 一部を切り取る
- 別媒体用に加工する
- 他のデザインと組み合わせる
といったことがあります。
発注者側としては、実務上、納品後に多少の修正や加工をしたい場面があります。
一方で、制作者側としては、自分の意図しない形で大きく改変されたくないと考えることもあります。
そのため、契約書では、著作者人格権を行使しない旨を定めるかどうか、
また、どの範囲の修正・加工を認めるかを検討する必要があります。
著作者人格権については、こちらの記事でも解説しています。
SNS運用代行契約書で定めたい「著作者人格権」とは?投稿の修正・加工・リライトで揉めないためのポイント
発注者側が契約書で確認したいポイント
デザイン制作を外注する発注者側は、契約書で次の点を確認しておきましょう。
著作権は発注者に移るのか
著作権譲渡なのか、利用許諾なのかを確認します。
どの媒体で利用できるのか
ホームページ、SNS、広告、チラシ、パンフレット、商品パッケージなど、利用できる媒体を確認します。
契約終了後も使えるのか
継続的に使う予定があるデザインは、契約終了後の利用可否も確認が必要です。
修正・加工してよいのか
文字変更、色変更、サイズ変更、トリミングなどができるか確認します。
元データをもらえるのか
AIデータ、PSDデータ、Canvaデータなどが必要な場合は、納品物に含まれるか確認します。
実績掲載されるのか
会社名、ロゴ、制作物、成果数値などが実績として掲載される可能性があるか確認します。
制作者側が契約書で確認したいポイント
デザイナーや制作会社側も、契約書をきちんと確認しておくことが大切です。
著作権をすべて譲渡する内容になっていないか
契約書によっては、制作物に関する著作権をすべて発注者に譲渡する内容になっていることがあります。
その場合、自分が過去に作ったテンプレートや汎用的なノウハウまで含まれていないか注意が必要です。
実績掲載ができるか
ポートフォリオや制作実績として掲載したい場合は、掲載条件を契約書で明確にしておきましょう。
元データの引き渡し範囲
完成データだけを納品するのか、編集可能な元データまで渡すのかを明確にしておく必要があります。
外部素材の責任範囲
発注者から提供された素材に権利上の問題があった場合、誰が責任を負うのかも確認しておきたいポイントです。
二次利用・改変の範囲
発注者が納品後にどこまで自由に使えるのかを明確にしておくことで、想定外の利用を防ぎやすくなります。
契約書に入れておきたい主な条項
デザイン制作を外注する場合、契約書では次のような条項を検討するとよいでしょう。
- 業務内容
- 納品物の内容
- 納品形式
- 報酬
- 修正回数
- 著作権の帰属
- 著作権譲渡または利用許諾
- 利用できる媒体・期間・範囲
- 元データの引き渡し
- 外部素材の利用条件
- 発注者提供素材の権利確認
- 実績掲載の可否
- 著作者人格権の不行使
- 秘密保持
- 契約終了後の取り扱い
- 損害賠償
- 反社会的勢力の排除
- 協議事項
もちろん、すべての契約書に同じ条項を入れればよいわけではありません。
ロゴ制作なのか、バナー制作なのか、チラシ制作なのか、SNS画像制作なのかによって、必要な条項は変わります。
大切なのは、実際の取引内容に合わせて、権利関係と利用範囲を具体的に整理することです。
テンプレート契約書をそのまま使う場合の注意点
インターネット上には、デザイン制作契約書や業務委託契約書のテンプレートが多くあります。
テンプレート自体が悪いわけではありません。
ただし、テンプレートをそのまま使うと、自社の取引内容に合っていないことがあります。
たとえば、
- ロゴ制作なのにバナー制作向けの内容になっている
- 著作権譲渡の範囲が広すぎる
- 利用許諾の範囲があいまい
- 元データの扱いが書かれていない
- 実績掲載の可否が決まっていない
- 外部素材の責任分担がない
- 修正回数や追加費用が不明確
といったことが起こりえます。
特に著作権条項は、取引内容によって調整が必要になりやすい部分です。
そのため、テンプレート契約書を使う場合でも、
著作権条項や納品物の範囲は慎重に確認することをおすすめします。
まとめ
デザイン制作を外注した場合、報酬を支払ったからといって、著作権が当然に発注者へ移るとは限りません。
ロゴ、バナー、チラシなどの制作物を安心して使うためには、契約書で次の点を明確にしておくことが大切です。
- 著作権は誰に帰属するのか
- 著作権譲渡か利用許諾か
- どの媒体で利用できるのか
- 契約終了後も使えるのか
- 修正・加工してよいのか
- 元データを受け取れるのか
- 外部素材やフォントの利用条件は問題ないか
- 実績掲載を認めるのか
- 著作者人格権の不行使を定めるのか
デザイン制作は、完成物を納品して終わりではありません。
納品後にどのように使うのか、どこまで再利用するのか、
誰が権利を持つのかを整理しておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。
発注者側も制作者側も、「なんとなく大丈夫だろう」ではなく、
契約書で具体的にルールを決めておくことが重要です。
著作権・契約書のご相談は行政書士中村拓哉事務所へ
デザイン制作の外注では、著作権の帰属、利用範囲、元データの引き渡し、
実績掲載の可否などを契約書で明確にしておくことが大切です。
行政書士中村拓哉事務所では、著作権に関する契約書の作成・チェック、
業務委託契約書、デザイン制作契約書、SNS運用代行契約書などのご相談を承っております。
- デザイン制作契約書を作成したい
- 外注先との契約書をチェックしてほしい
- 著作権条項を入れたい
- ロゴやバナーの利用範囲を整理したい
- 元データの引き渡しについて契約書に明記したい
- 実績掲載やポートフォリオ利用の条件を決めたい
- テンプレート契約書を自社用に修正したい
このようなお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。
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