会社や店舗、サービスを立ち上げるときに、ロゴ制作をデザイナーや制作会社に依頼することがあります。
ロゴは、ホームページ、名刺、看板、チラシ、SNSアイコン、商品パッケージなど、
さまざまな場面で使われる大切なデザインです。
しかし、ロゴ制作を依頼したときに注意したいのが、完成したロゴをどこまで自由に使えるのかという点です。
発注者側は、「お金を払って作ってもらったのだから、当然自由に使えるはず」と考えることがあります。
一方で、制作者側は、
「制作したロゴの著作権まで当然に譲渡したわけではない」
「実績として掲載したい」
「元データの引き渡しは別料金」
と考えている場合もあります。
この認識のズレを放置したまま進めると、後から、
- ロゴを看板やチラシにも使ってよいのか
- 色や形を変更してよいのか
- 商標登録してもよいのか
- 元データをもらえるのか
- 別の商品やサービスにも使ってよいのか
- 制作者が実績として掲載してよいのか
といった点でトラブルになる可能性があります。
この記事では、ロゴ制作を依頼するときに確認しておきたい著作権・商標・契約書のポイントを、
発注者・制作者の双方の視点からわかりやすく解説します。
ロゴ制作を依頼したら著作権は発注者に移る?
まず押さえておきたいのは、ロゴ制作を依頼して報酬を支払ったからといって、
著作権が当然に発注者へ移るわけではないという点です。
ロゴが著作物にあたる場合、その著作権が誰に帰属するかは、契約内容によって問題になります。
発注者側は、「自分の会社やサービスのために作ってもらったロゴだから、自分のものになる」と考えがちです。
しかし、契約書で著作権譲渡について明確に定めていなければ、著作権が制作者側に残る可能性があります。
もちろん、発注者がまったく使えないという意味ではありません。
通常は、依頼した目的の範囲でロゴを使用することが想定されます。
ただし、
- ホームページだけで使えるのか
- 名刺や看板にも使えるのか
- 商品パッケージにも使えるのか
- SNS広告にも使えるのか
- 別サービスにも使えるのか
- ロゴを加工して使えるのか
といった利用範囲は、契約書で明確にしておくことが大切です。
デザイン制作を外注した場合の著作権については、こちらの記事でも解説しています。
デザイン制作を外注したときの著作権は誰のもの?ロゴ・バナー・チラシ制作で確認したい契約書のポイント
ロゴは著作権だけでなく商標も関係する
ロゴ制作では、著作権だけでなく、商標の問題も関係することがあります。
著作権は、創作的な表現を保護するものです。
一方で、商標は、商品やサービスの目印となる名称・ロゴ・マークなどを保護するものです。
たとえば、会社やサービスのロゴを長く使っていく場合、そのロゴがブランドの目印になります。
そのため、発注者としては、
- 他社に同じようなロゴを使われたくない
- 自社ブランドとして守りたい
- 将来的に商標登録を検討したい
- ロゴを商品やサービスの目印として使いたい
と考えることがあります。
ここで注意したいのは、ロゴの著作権を整理していないまま商標登録を進めようとすると、
後から制作者との間で問題になる可能性があることです。
たとえば、制作者との契約でロゴの利用範囲があいまいなままだと、
「商標登録まで認めたつもりはない」
「別の商品展開に使うことは想定していない」
といったトラブルになることがあります。
なお、商標登録の出願代理は弁理士などの専門領域です。
行政書士が対応する場合は、商標出願そのものではなく、ロゴ制作契約書や著作権条項、
利用範囲の整理などが中心になります。
ロゴをどこまで使えるか契約書で決めておく
ロゴは、完成後にさまざまな媒体で使われます。
たとえば、次のような利用が考えられます。
- ホームページ
- 名刺
- チラシ
- パンフレット
- 看板
- 店舗内装
- SNSアイコン
- SNS投稿画像
- YouTubeチャンネル
- 商品パッケージ
- ユニフォーム
- ノベルティ
- 契約書・請求書
- 広告
- 展示会資料
このように、ロゴはかなり広い範囲で使われる可能性があります。
そのため、契約書では、ロゴをどの媒体で使えるのかを明確にしておくことが大切です。
特に、最初はホームページ用として依頼したロゴでも、後から看板、チラシ、商品パッケージ、
広告などに使いたくなることがあります。
発注者側としては、将来的な利用も見据えて、できるだけ利用範囲を整理しておくと安心です。
一方で、制作者側としては、想定外の使われ方を避けたい場合、
利用目的や利用範囲を契約書で明確にしておくことが重要です。
色変更・サイズ変更・加工はできる?
ロゴは、納品後にそのままの形だけで使うとは限りません。
実際には、使用する媒体に合わせて、次のような変更を行うことがあります。
- 色を変更する
- 白抜き版を作る
- 横長版・縦長版を作る
- アイコン版を作る
- サイズを変更する
- 文字部分だけを使う
- マーク部分だけを使う
- 背景に合わせて一部調整する
- SNSアイコン用にトリミングする
発注者側としては、ロゴを実務上使いやすくするために、ある程度の加工や調整をしたい場面があります。
一方で、制作者側としては、ロゴの印象が大きく変わるような改変を避けたいと考える場合があります。
そのため、契約書では、
- 色変更を認めるか
- サイズ変更を認めるか
- 一部だけを使ってよいか
- 改変する場合に事前承諾が必要か
- ガイドラインに従う必要があるか
といった点を定めておくと安心です。
元データの引き渡しも重要
ロゴ制作で特に確認しておきたいのが、元データをもらえるかどうかです。
ロゴは、ホームページだけでなく、印刷物や看板、商品パッケージなどにも使われることがあります。
そのため、JPEGやPNGだけでなく、編集可能なデータや高解像度データが必要になることがあります。
たとえば、次のようなデータです。
- AIデータ
- SVGデータ
- PDFデータ
- PNGデータ
- JPEGデータ
- EPSデータ
- 白黒版データ
- 白抜き版データ
- 横型・縦型データ
発注者側は、「ロゴを依頼したのだから、元データも当然もらえる」と思うかもしれません。
しかし、実務上は、完成画像データのみが納品対象で、
AIデータなどの元データは別料金になっていることもあります。
そのため、契約書では、
- 納品形式
- 元データの有無
- 編集可能データを渡すか
- 追加料金の有無
- 第三者にデータを渡してよいか
- 発注者側で編集してよいか
を明確にしておくことが大切です。
著作権譲渡にするか、利用許諾にするか
ロゴ制作契約書では、著作権の扱いとして、主に次の2つの考え方があります。
- 著作権譲渡
- 利用許諾
著作権譲渡とは
著作権譲渡とは、ロゴに関する著作権を制作者から発注者へ移すことです。
発注者側としては、ロゴを自由に使いやすくなるというメリットがあります。
特に、ロゴは会社やサービスの顔として長期間使うことが多いため、
発注者側としては著作権譲渡を希望するケースもあります。
ただし、著作権譲渡にする場合でも、契約書で譲渡の範囲を明確にしておく必要があります。
利用許諾とは
利用許諾とは、著作権は制作者側に残したまま、発注者に一定の範囲でロゴの利用を認める形です。
たとえば、
- 発注者の事業活動に必要な範囲で利用できる
- ホームページ・名刺・チラシ・SNSで利用できる
- 商標登録は別途協議する
- 改変には事前承諾が必要
といった形です。
利用許諾の場合は、どこまで利用できるのかを具体的に決めておくことが重要です。
著作権譲渡と利用許諾の違いについては、こちらの記事でも解説しています。
SNS運用代行契約書で定めたい「著作権譲渡」と「利用許諾」の違いとは?
商標登録を予定している場合は特に注意
ロゴを将来的に商標登録したい場合は、制作契約の段階でその予定を整理しておくことが大切です。
商標登録を考える場合、少なくとも次のような点を確認しておきたいところです。
- ロゴを商標として使用する予定があるか
- 商標登録の出願を予定しているか
- ロゴの著作権は発注者に譲渡されるのか
- 商標登録に必要な範囲で利用できるのか
- 制作者の承諾が必要か
- 外部素材やフォントが含まれていないか
- 類似ロゴや既存商標との関係を確認する必要があるか
特に、ロゴの中に素材サイトのイラストやフォントが使われている場合、
商標登録に使えるかどうかは慎重に確認する必要があります。
素材サイトやフォントの利用規約によっては、ロゴとしての利用や商標登録を制限している場合もあります。
そのため、ロゴ制作を依頼するときは、
最初から「商標登録も検討している」と制作者に伝えておくとよいでしょう。
外部素材・フォントを使っている場合の注意点
ロゴ制作では、制作者がすべてを一から作るとは限りません。
場合によっては、次のような素材やフォントを使うことがあります。
- 有料フォント
- フリー素材
- アイコン素材
- イラスト素材
- テンプレート
- 既存の図形素材
- AI生成画像
ここで注意したいのは、素材やフォントにはそれぞれ利用条件があるということです。
たとえば、商用利用はできても、ロゴとしての利用はできない場合があります。
また、商標登録を前提とした利用が禁止されている素材もあります。
そのため、契約書では、
- 外部素材を使用するか
- 使用する素材やフォントの利用規約を誰が確認するか
- 商標登録に使える素材か
- 有料素材の費用は誰が負担するか
- 素材に権利上の問題があった場合の責任分担
を確認しておくと安心です。
実績掲載・ポートフォリオ利用を認めるか
ロゴ制作では、制作者が完成したロゴを実績として掲載したいと考えることがあります。
たとえば、
- 制作者のホームページに掲載する
- SNSで制作実績として紹介する
- ポートフォリオに掲載する
- 制作事例として営業資料に使う
- ロゴの制作過程を紹介する
制作者にとって、実績掲載は営業活動のために重要です。
一方で、発注者側としては、
- 公開前に掲載されたくない
- 会社名やサービス名を出してほしくない
- 新サービスの情報を出されたくない
- 商標登録前に公開されたくない
- 制作過程を見せてほしくない
と考えることがあります。
この点を契約書で決めていないと、
「実績として掲載してよいと思っていた」
「勝手に掲載されるとは思わなかった」
というトラブルになる可能性があります。
契約書では、次の点を確認しておくとよいでしょう。
- 実績掲載を認めるか
- 事前承諾が必要か
- 匿名であれば掲載できるか
- ロゴ画像を掲載してよいか
- 会社名やサービス名を出してよいか
- 商標登録前の掲載を禁止するか
- 掲載できる媒体
- 削除依頼があった場合の対応
実績掲載については、こちらの記事でも解説しています。
SNS運用代行の実績掲載はどこまでOK?ポートフォリオ利用・事例紹介で揉めないためのポイント
著作者人格権の不行使条項も確認する
ロゴ制作契約書では、著作権だけでなく、著作者人格権についても確認しておきたいところです。
著作者人格権とは、著作者の人格的利益を守るための権利です。
著作権は譲渡できますが、著作者人格権そのものは譲渡できません。
ロゴの場合、納品後に発注者が、
- 色を変更する
- サイズを変更する
- 一部を切り出して使う
- 横型・縦型に変更する
- 他のデザインと組み合わせる
- リニューアル時に一部を調整する
といったことがあります。
このような利用を想定する場合、契約書で著作者人格権を行使しない旨を定めることがあります。
ただし、制作者側としては、自分の意図しない形でロゴが大きく改変されることを避けたい場合もあります。
そのため、契約書では、どの範囲の変更を認めるのかを具体的に整理しておくことが大切です。
著作者人格権については、こちらの記事でも解説しています。
SNS運用代行契約書で定めたい「著作者人格権」とは?投稿の修正・加工・リライトで揉めないためのポイント
発注者側が契約書で確認したいポイント
ロゴ制作を依頼する発注者側は、契約書で次の点を確認しておきましょう。
著作権は発注者に移るのか
著作権譲渡なのか、利用許諾なのかを確認します。
どの媒体で使えるのか
ホームページ、名刺、看板、チラシ、SNS、商品パッケージ、広告などで使えるか確認します。
商標登録を予定しているか
商標登録を検討している場合は、ロゴ制作の段階でその前提を伝えておくことが大切です。
色変更・加工ができるか
ロゴの色変更、サイズ変更、一部利用、白抜き版の作成などができるか確認します。
元データをもらえるか
AI、SVG、PDF、PNGなど、必要なデータ形式を確認します。
実績掲載されるか
制作者のホームページやSNSに掲載される可能性があるか確認します。
制作者側が契約書で確認したいポイント
ロゴ制作者やデザイン会社側も、契約書をきちんと確認しておくことが大切です。
著作権をすべて譲渡する内容になっていないか
契約書によっては、制作物に関する著作権を広く発注者に譲渡する内容になっていることがあります。
その場合、ロゴ以外のラフ案、提案資料、テンプレート、ノウハウまで含まれていないか注意が必要です。
商標登録を予定しているか
発注者がロゴを商標登録する予定がある場合、その前提で制作内容や素材利用を確認する必要があります。
元データの引き渡し範囲
完成画像だけを納品するのか、編集可能な元データまで納品するのかを明確にしておきましょう。
実績掲載ができるか
ポートフォリオや制作実績として掲載したい場合は、掲載条件を契約書で定めておくことが大切です。
外部素材・フォントの責任範囲
外部素材やフォントを使用する場合、利用規約の確認や責任分担を整理しておきましょう。
ロゴ制作契約書に入れておきたい主な条項
ロゴ制作を依頼する場合、契約書では次のような条項を検討するとよいでしょう。
- 業務内容
- 納品物の内容
- 納品形式
- 納期
- 報酬
- 修正回数
- 追加修正の費用
- 著作権の帰属
- 著作権譲渡または利用許諾
- 利用できる媒体・範囲
- 商標登録を予定する場合の確認事項
- 元データの引き渡し
- 色変更・加工・改変の可否
- 外部素材・フォントの利用条件
- 実績掲載の可否
- 著作者人格権の不行使
- 秘密保持
- 再委託の可否
- 損害賠償
- 反社会的勢力の排除
- 協議事項
すべての契約書に同じ条項を入れればよいわけではありません。
会社ロゴなのか、サービスロゴなのか、商品ロゴなのか、商標登録を予定しているのかによって、
必要な条項は変わります。
大切なのは、実際の利用目的に合わせて、著作権・利用範囲・納品物・商標登録の予定を整理しておくことです。
テンプレート契約書をそのまま使う場合の注意点
インターネット上には、デザイン制作契約書や業務委託契約書のテンプレートが多くあります。
テンプレート自体が悪いわけではありません。
ただし、ロゴ制作では、テンプレート契約書をそのまま使うと不十分な場合があります。
たとえば、
- 著作権の帰属があいまい
- 商標登録を予定している場合の記載がない
- 元データの引き渡しが書かれていない
- 色変更や加工の可否が決まっていない
- 外部素材やフォントの確認がない
- 実績掲載の可否が決まっていない
- 著作者人格権の不行使条項がない
といったケースです。
ロゴは、事業の顔として長く使われることが多い制作物です。
そのため、契約書では、将来的な利用も見据えて、権利関係を丁寧に整理しておくことをおすすめします。
まとめ
ロゴ制作を依頼した場合、報酬を支払ったからといって、ロゴの著作権が当然に発注者へ移るとは限りません。
また、ロゴは著作権だけでなく、商標の問題も関係することがあります。
安心してロゴを使い続けるためには、契約書で次の点を明確にしておくことが大切です。
- ロゴの著作権は誰に帰属するのか
- 著作権譲渡か利用許諾か
- どの媒体で利用できるのか
- 商標登録を予定しているか
- 色変更・加工・改変ができるのか
- 元データを受け取れるのか
- 外部素材やフォントを使っていないか
- 実績掲載を認めるのか
- 著作者人格権の不行使を定めるのか
ロゴは、ホームページや名刺だけでなく、看板、広告、商品、SNS、契約書類など、
事業のさまざまな場面で使われます。
だからこそ、制作時点で
「どこまで使えるのか」
「誰が権利を持つのか」
「将来的に商標登録を考えているのか」
を整理しておくことが重要です。
発注者側も制作者側も、
「なんとなく大丈夫だろう」
ではなく、契約書で具体的にルールを決めておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。
著作権・契約書のご相談は行政書士中村拓哉事務所へ
ロゴ制作を依頼する場合、著作権の帰属、利用範囲、元データの引き渡し、
実績掲載の可否、商標登録を見据えた利用条件などを契約書で明確にしておくことが大切です。
行政書士中村拓哉事務所では、ロゴ制作契約書、デザイン制作契約書、
業務委託契約書、著作権条項の作成・チェックに関するご相談を承っております。
- ロゴ制作契約書を作成したい
- デザイナーとの契約書をチェックしてほしい
- ロゴの著作権が誰にあるのか確認したい
- ロゴをどこまで使えるか契約書で整理したい
- 元データの引き渡しについて決めておきたい
- 実績掲載やポートフォリオ利用の条件を定めたい
- 商標登録を見据えて、ロゴ制作時の契約内容を整理したい
- テンプレート契約書を自社用に修正したい
このようなお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。
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